申告書の税務署印は、税務署のお墨付きという意味ではない
申告書に税務署印があるからといって、税務署のお墨付きがあるというわけではありません。税務署印は、確かに申告書を受け取りましたという「受付印」でしかありません。しかし、この受付印にも大切な意義があります。税務署に何かを提出するときには、必ず自分用の控えも作成し、控えに提出印をもらってくださいね。
M&Aの財務調査で
M&A(エムアンドエー)とは『Mergers and Acquisitions』の略です。
企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり、ある会社が他の会社を買ったりすることです。
ひと昔前は、M&Aといえば大きな会社だけのものでしたが、最近は、中小企業の間でもM&Aが頻繁に行われるようになってきましたね。
M&Aを行うに際しては、「財務デューデリジェンス」(財務DDと略されます)といものを実施します。
財務デューデリジェンスとは、買収企業が作成いた財務諸表の適正性を検証することです。
これにより、資産の劣化、不良資産の存在、負債の過少計上、重要な簿外債務の発見等、買収先企業の価値を判断します。
だいぶ前ですが、財務DDで訪れた先で
「申告書には、税務署の印鑑が押してあって、税務署のお墨付きをもらっているはずなのに、なぜあなたたちの調査が必要なのですか?」
と聞かれたことがあります。
財務DDの意味は、他にもあるのですが、今日は、この税務署に印鑑について書きたいと思います。
税務署の印鑑
最近では、電子申告が増えてきているので、この印鑑を目にする機会は減ってきています。
ひと昔前の申告書には、税務署の印鑑が押されていました。
銀行に提出する申告書には、この印鑑は必須でした。
こんな印鑑です。
意味は?
先の方は、
この印鑑がある=税務署が申告書の内容を承認している
と考えておられたようです。
確かに実務に携わったことがなければ、そのように考えてしまうのも無理もないことかもしれません。
でも実際は違います。
この印鑑が押されるタイミングを考えれば答えはわかります。
この印鑑は、税務署に申告書などの書類を提出したときにもらえます。
その際、税務署の職員は申告書の内容を詳細に確認するわけではありません。
書類を受け取って、事務的にハンコを押してくれるだけです。
そうです。
これは単なる「受付印」です。
「確かに書類を受け取りました。」
という意味しかありません。
決して、内容に間違いがありませんというお墨付きではありません。
その証拠に、この印鑑があるからといって、税務調査は免除になりません。
なってくれたら、嬉しいのですが…
受付印にも大切な意義がある
でも、この受付印だからといってバカにしてはいけません。
大切な意義があります。
2つ意義があります。
一つ目は、この日付に間違いなく申告書を提出しましたという証拠となります。
あまり聞かない話ですが、税務署が受け取った申告書を紛失してしまったような場合に効力を発揮します。
受付印のある控えが手元にあれば、税務署に対して対抗ができます。
2つ目は、税務署に提出した申告書と同じものですと証明になります。
これは銀行融資を受ける際に重要となります。
融資を受ける場合、業績をよく見せたいですよね。でも、あまり業績がいいと税金をたくさん払わないといけません。
そこで、悪知恵の働く人は考えます。融資用と税務署用と2つ申告書を作って、それぞれ違うものを出してしまえ!と考えます。
でもそんなことをされたら、銀行側は困ります。
そこで、銀行などは必ず税務署印のある申告書の提出を求めます。
受付印があることで、申告書が本物だということを確認しているのですね。
税務署に何かを提出する際は、提出用と控え用と2部作り、控え用に税務署印を必ずもらってくださいね。
電子申告の場合は?
電子申告の場合は、この受付印はありません。
その代わり、メッセージボックスというものがあります。
銀行などへは、メッセージボックスと申告書を一緒に提出すれば大丈夫です。
税理士に申告を依頼している場合は、必ずメッセージボックスを付けて申告書を渡してくれるはずです。
もし、このメッセージボックスをなくして慌てる必要はありません。電子申告のシステムにアクセスすれば取得が可能です。
長くなるので、具体的な手続きはまたの機会に。
編集後記
昨日は、PTA総会でした。PTA総会で次期役員さんへバトンタッチしました。
忙しくて大変なこともあったけれど、妙な充実感もあったので、軽くPTAロスです。
役員活動とか好きなタイプじゃなかったのに…どうしたんだろう?