消費税率が上がるタイミングで事務所の家賃を消費税分だけ値上げしたいとお願いされたら?

2019年2月1日

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2019年10月から消費税率が10%に上がります。で、このタイミングで消費税分だけ家賃の値上げをお願いされるケースもあると思います。「はいはい、いいですよ」と言ってしまいそうなのですが、ちょっと待ってください。もしかすると、その家賃は仕入税額控除の対象とならない家賃かもしれません。

2019年1月最後の日の梅

居住用は非課税だけど事業用は課税

まず、家賃に関する消費税のおさらいです。賃貸借契約書において、居住用となっていれば非課税、事業用となっていれば課税です。居住用が非課税なのは、政策的な配慮によるものです。

つまり、住まいとして借りているのであれば消費税はかからないけれど、会社の事務所や店舗のように事業用として借りていれば消費税がかかります。なので、冒頭の家賃の値上げは、妥当なものに思われます。

インボイス制度が導入される

でも、ここで一つ考えておかないといけないことがあります。

2019年の消費税率アップの次には、もう一つ重要な制度の導入が控えています。2023年10月から導入されるインボイス制度(「適格請求書等保存制度」)です。

インボイス制度とは、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる仕入税額控除の方式です。

相手先が課税事業者でないと仕入税額控除ができない

消費税の計算の仕組み(仕入税額控除)

課税事業者が納める消費税=預かった消費税-支払った消費税

今だって、預かった消費税から支払った消費税を引いているやん?と思っていらっしゃいますよね。

そうです。計算方法は同じなのですが、「支払った消費税」として認められるための要件が厳しくなります。

現在は、請求書保存方式という方式が採用されています。支払った消費税として認められるためには、
取引の相手方が発行した請求書等の客観的証拠書類の保存が要件です。

請求書保存方式とインボイス方式と比較してみましょう。

請求書保存方式とインボイス方式の比較

そうです。

最大の違いは、課税事業者からの仕入でないと仕入税額控除できないということです。ちなみにインボイスが発行できる事業者(適格請求書発行事業者)は登録制で、インターネット上に公表される予定です。

なぜこんな面倒な制度が導入されるのでしょうか?

益税を排除したいという国の意向だといわれています。

益税って何?

お客さんが支払って税金のうち納税されずに合法的に事業者の手元に残る消費税のことを言います。免除事業者や簡易課税制度が益税を生む原因となっています。

大家さんは課税事業者?それとも免税事業者?

さて、消費税が上がるから家賃を消費税分だけ値上げさせてほしいといわれた場合です。大家さんが課税事業者ならばインボイスを発行できるので、消費税分値上がりするのは仕方がないことです。仕入税額控除もできますし、納得もいくでしょう。

それでは、大家さんが免税事業者だった場合はどうでしょうか?

免税事業者はインボイスを発行することができませんので、家賃分については仕入税額控除もできません。つまり消費税分という名目で家賃は上がっているので、仕入税額控除ができないという納得のいかない状況(便乗値上げ?)となります。

ビジネス街にビルを所有しているような大家さんは課税事業者である可能性が高いです。でも、小規模な貸付(自分の自宅の一角を店舗用に貸しているとか)、所有する賃貸マンションの大部分が居住用の場合は、免税事業者である可能性があります。

インボイス制度が導入されるのは、2023年からです。5年先ということもあり、詳細は決まっていないように感じます。今、公表されているような制度となるかどうかもまだまだ不透明です。

でも、消費税率が上がるのは2019年10月からです。今年の10月の段階で消費税率アップ分の値上げをお願いされるケースもでてくるのではないでしょうか?

そういった場合は、大家さんが課税事業者かどうかを確認されてから契約をみなす方がよさそうです。

編集後記

今日は、午前中に歯医者へ行った後、お昼から小学校へ。

先週末から寒いけれど、梅が咲いていました。とってもいい香り。